橙色で、不思議な形をした植物――ほおずき(鬼灯)
「ほおずきは魔除けになる」と言われ、玄関やお盆、お仏壇に飾られる反面、「ほおずきは庭に植えてはいけない」という言い伝えも耳にします。
- ほおずきが魔除けになると言われる理由はなぜ?
- ほおずきを庭に植えてはいけない理由はなぜ?
- ほおずきの飾り方は?
今回は、縁起物としての「ほおずき」にまつわるエピソードや言い伝えについてのお話です。
ほおずきが「魔除けになる」理由
ほおずきは提灯、明かりのような形状をしているため、お盆に還ってきた死者の足元を照らし、ご先祖様が迷わずに家への道を歩める、などの意味合いを込めて「魔除けになる」と言われます。
霊魂や精霊は、灯(ともしび)に導かれて集まる、などの言い伝えもあります。
ほおずき=提灯のような形状=灯に霊が集まる
お墓に飾られたり、お盆の行事に使われたりするなど、宗教的な行事と深く関わるケースが多いため、イメージ的に「ほおずき=魔除けになる」とされ、ほずきが魔除け・厄除けになると言い伝えられる場合も。伝承が伝承を生むパターンですね。
地域によっては「ほおずきが家を守る」「ほおずきで悪霊や邪気を払える」とされています。
地方によっては、「ほおずき」を魔除け代わりに玄関に飾るところもあります。鬼が守っている証に見立てることで、悪い霊や邪気を追い払うことができるという謂れがあるようです。
引用:全日本宗教用具協同組合
その他、ほおずきの風水効果として、金運アップや良縁を招くとも言われており、幸運を招くアイテムとして用いられます。
「ほおずき」を飾ることでの風水の効果は、金運アップや、良い運を運び入れてくれるという効果があります。
引用:全日本宗教用具協同組合
ほおずきの祭り「ほおずき市」
日本の縁日には、ほおずきの名を冠する「ほおずき市」があります。
ほおずきの魔除け効果や、ほおずきの縁起のよさを由来に「市(いち)」が開催され、無病息災や厄除けを願い、参拝者が多く訪れます。
有名どころでは、浅草寺のほおずき市、信松院のほおずき市、朝日神社のほおずき市など。
「ほおずきの実を水で鵜呑み(丸飲み)すれば、大人は癪(なかなか治らない持病)を切り、子供は虫気(腹の中にいると考えられた虫による腹痛など)を去る」という民間信仰があり、ほおずきを求める人で賑わったそう
鮮やかなほおずきは、昔は薬用にもされていた。
ほおずきの、病に対する薬効が注目された結果、ほおずきが縁起のよい植物として人々に愛されたため、今でも日本では、ほおずきに関する縁日が開かれています。
ほおずきを「庭に植えてはいけない」理由
「ほおずきは魔除けになる」と言われるいっぽうで、「庭に植えてはいけない」とも言われます。
ほおずきを庭に植えてはいけない理由は、次の3つ。
非科学的な理由と、科学的な理由の両方があります。
結論、庭には植えないほうがいい、と言い伝えられています。
理由①縁起が悪い
- ほおずきを庭に植えた家は、死者が出る
- ほおずきを庭に植えた家は、病人が出る
このような言い伝えにより、ほおずきは縁起が悪い植物として扱われるケースがあります。
ほおずきの花言葉は「自然美」「偽り」「ごまかし」です。
「自然美・心の平安・偽り」
引用:花キューピット
「自然美」や「心の平安」はポジティブな印象ですが、「偽り」の花言葉は、人間関係のトラブルや、親しい人への裏切りなどを暗示し、不吉なイメージも兼ね備えています。
お盆に死者を迎えるために飾られる経緯もあり、ほおずきが霊的な世界とこの世をつなぐ役割を持つことから、怖れが生じて「なんだか怖い植物」「縁起が悪い」と解釈する声があります。
理由②毒がある
ほおずきには「食用」と「観賞用」がありますが、観賞用のほおずきには毒があります。
薬効・毒性
地下茎および根は酸漿根(さんしょうこん)という生薬名でよばれている。ナス科植物の例に漏れず、全草に微量のアルカロイドやソラニンが含まれている。特に酸漿根の部分には子宮の緊縮作用があるヒストニンが含まれており、妊娠中の女性が服用した場合、流産の恐れがある。
ほおずきは、人間や動物に悪い影響を与える恐れがある「アルカロイド」や、毒性成分の「ソラニン」が含まれます。
また、ヒストニンは子宮収縮作用がある成分のため、妊婦さんがほおずきを食べると流産してしまう恐れがあります。
ほおずきの見た目は
- オレンジ色(朱色)できれい
- 提灯型で、かわいい
- 実がプチトマトや果物のようで、おいしそう
- 触るとプニプニして、なんだか楽しい
など、独特の形状を持つため、ちいさな子供は興味本位で口に入れてしまう恐れもあります。
毒性のある観賞用のほおずきを庭に植えてしまうと、子供が誤飲したり、ペットが食べてしまうため、「ほおずきは庭に植えてはいけない」と言われます。
理由③傷みやすい、腐りやすいため
ほおずきは傷みやすい植物のため、管理状況が悪いと腐ったり、枯れたりしやすいです。
ほおずきは、少し湿った場所での栽培が適していますが、水はけが良くないと白絹病にかかったり、腐り落ちたりします。
傷んだり、腐った植物が庭にあると景観を損なったり、ご近所様に迷惑をかける恐れもあることから、ほおずきの育成に自信がない場合は、庭に植えるのを避けたほうがいい、とも言われます。
ほおずき(鬼灯)とは
ほおずき | 鬼灯、鬼燈、酸漿 |
---|---|
分類 | ナス科ホオズキ属 |
学名 | Physalis alkekengi var. franchetii |
形態 | 多年草 |
丈 | 30~90cmほど |
開花 | 6月~7月 |
「ほおずき」というと、オレンジ色のガクに包まれた形状が思い浮かびますが、6月になると白色、クリーム色の花が咲きます。
ほおずきの果実が実のは、7月から8月くらいです。ちょうどお盆のシーズンですね。
もともとは海外(東アジア・中国)から、薬草として渡来したと言われます。平安時代では鎮静剤として使われていました。
最近の日本でも、薬効を得るために煎じて飲まれる場合がありますが、主には宗教的な儀式(お盆やお墓参りなど)に用いられるケースが多いです。
ほおずきの飾り方(玄関・お墓・仏壇など)
ご先祖様をお迎えするための灯としてほおずきを飾る場合の「飾り方」について。
ほおずきを飾る場所や、飾る方法に明確な決まりはありませんが、主に、玄関やお墓、お仏壇に飾られることが多いです。
ほおずきを玄関に飾る
ほおずきを玄関に飾るときは、
- 玄関に吊るす
- 鉢植えにして、そのまま飾る
お好きなように飾ってOKです。
玄関は「気」が出入りする場所のため、魔除け効果を持つほおずきを飾ることで、悪い縁をシャットアウトし、良縁を招く効果に期待が持てます。
良縁がスムーズに招かれるように、玄関をスッキリと整えてからほおずきを飾りましょう。
ほおずきをお墓や仏壇に飾る
ほおずきをお墓や仏壇に飾るときは、
- お供えの仏花とともに、花立で飾る
- 盆棚や精霊棚の上で飾る
- 吊るして飾る
いちばん手軽に飾る方法は、お仏壇やお墓に備え付けられた花立に仏花といっしょに飾る方法です。
活け方や飾り方に堅苦しいルールはないため、ご先祖様が我が家に戻ってくる「目印」になるように想いを込めて飾りましょう。